フィンランドでのアマチュア局の運用

日本人初の相互運用協定によるアマチュア無線局
2000年7月4日から8日まで
田中透 JR3QHQ


目次


はじめに

 私は、2000年7月4日〜8日までフィンランドから海外運用の機会を持ちました。 フィンランドはみなさんもうすでにご存じの通り、DXCC上もさほど珍エンティティーでもなく有名な国です。 友人は、みんな「何んでOHまでわざわざ重たい機材を持って無線しに行くのか。どうせ行くならもっと珍エンティティーに行ったら」と言いましたが、そんなところへ行く機会はありません。 今回の海外旅行が私にとって唯一の旅行なのです。

 事の始まりは、家族でフィンランド製のヨットを購入したことから始まります。このヨットは、フィンランの工場で作られ日本へ船便で送られてくることになっています。 今回のフィンランド行きは、このヨットを見学に行く目的と、せっかくフィンランドに行くのだから、ヨットをチャーターしてバルト海クルーズを楽しもうと言う目的で行くことになりました。 そこに、私のOHでの運用がくっついたと言うわけです。


OHでの免許取得

 以前、KH2から運用したことはありますがWでの免許取得は、情報も多くあり簡単に手に入れる事が出来ました。(現在は、その必要もありませんが)  しかし、OHの免許取得の情報は、JARL Webにしかなくそれを見ればすぐにわかると言うものでも無かったのです。OHの免許は、相互運用協定で貰えるのはわかっていてもその方法は、簡単にWebに書いてあるだけで詳しくは、まったくわからないのが実状のようでJARLに問い合わせをしても、何だかんだといわれて、結局OHの免許申請を 日本人でした人がいる記録がJARLに無いとのことでよくわからないと言う返事が返ってきました。

でも、JARLとは、いろいろ連絡取り合い申請書を貰ったりして、アドバイスを頂きました。 そこで、わかった事ですが 以前OHでは、相互運用協定の局に対して固定局の免許しか発行しなかったようです。 私がJARLで貰った申込み書の裏にそのように書かれていました。 これがくせ者でして、情報が無い私にとってこれが古い申込書だとは決して思わなかったのです。 「移動運用が出来ないそんなバカな」実は、もう1つフィンランドから貰った申込み書がありこれと比べると少しずつフォームが違うのに気付きました。

そうなんです、JARLからの物は古いものだったのです。 申込み書の裏をみると、固定局のみの英文がすっかり削除されているではありませんか。 はじめから、わかっていればこんな事すんなり行くことですが、初めてと言うのはいろいろあるものです。

 OHでの免許の取得方法は、JAの従免・局免の英文証明とOHの免許申込書・パスポートのコピーそれに、次に問題になるパスポートのコピーが間違いなく本人のパスポートのコピーであると言う証明が必要です。

「これって、いったい何のこと?」となるのです。これは、公証人役場というところでもらう事になっていますが、うまく説明しないともらえないことになります。 私の場合も公証人役場で何に使うのかと、いろいろ聞かれやっと証明を出してくれました。 その方法は、公証人役場では、コピーの証明そのものはしてくれません。 そのコピーに「このコピーは、私のパスポートのコピーである」と自筆で書いてサインし、それを私文書として、それの証明をしてもらう方法で頂きました。 申請から1ヶ月でOHから免許を頂きましたが、これでOKとはいきません。 OHに着いて、銀行で85マルカを振り込まないとその免許は、有効になりません。 日本から海外送金で振り込む手はありますが、ダメです。 本人がOHに実際に来たとと言う証拠が無いからです。振込は、必ずOHの銀行でするよう書かれてます。


現地の情報

 今回は、チャーターヨットでの宿泊ですのでホテルなどの建物の中でゆっくりくつろいで運用と言うことはできません。 といってもヨットでの運用では/MMで、本当に何しに行ったと言われます。 問題は、このヨットがどんなコースでどこへ連れて行ってくれるのか、そこで無線の運用が出来るのかがポイントになってきます。

この旅行を計画しているのは、私ではなく他の人ですので「この情報をどこからもらえばいいのか?」から始めなければなりません。 現地のチャーター会社(この時点で大きな会社だと思っていた)のFAX番号を聞き、無線ができるか電源はあるかどこへ行くのかをやりとりし、向こうから基本的にはすべてOKの返事を頂きましたが、アンテナを建てるスペースや電源のある位置などの詳しい情報までは手に入れるのは無理でした。 相手がアマチュア無線家なら話が早いのですがそうは行きません。

ですから、現地へ行ってからが勝負です。 もし、電源の位置とアンテナを建てるスペースが遠くはれていて同軸や電源コードが届かなければ運用は出来ません。 予定では、1日目ヘルシンキからポルボーと言う町へ行き、2日目ポルボーからカッサリ島へ行き、3日目ヘルシンキに帰るというものでした。

「カッサリ島?ここは、ひょっとしてIOTAナンバーがあるのでは?ただ単にOHでの運用だけでなくIOTA運用(ペティションまではいかない)が出来るのでは」と欲が出来て調べるとなんとEU-140のナンバーが着いているではありませんか。

とりあえず、IOTA運用も考え、友人の舟木君に連絡しインターネットでの配信をしていただきIOTA運用の方法も教えていただきました。TNX(後で、どんでん返しがありますが)


運用の準備

 今回は、無線をするのは私1人だけですので他のメンバーに迷惑をかける事が出来ないのでアンテナの設営からリグの設置まで原則的に1人ででき、なおかつJAへ電波を飛ばすことの出来るシステムを考えなければなりません。

また、荷物も飛行機に乗るとき超過運賃を払わないですむコンパクトなものにしなければお金の無い私には大変です。それに現地の詳しい情報もありません。 そこで、いろいろ考え実験し下記の内容のシステムを持っていきました。

リグ・・・FT-100(借り物)
アンテナ・・・ミニマルチ 2ELE HB9CV 14/21/28MHz
電源・・・DAIWA 30A スイッチング電源(中ふたを開けてタップを変えるだけで230V使用に変身)
同軸・・・5D-2V 30m
ポール・・・移動用ポールMAX5mHのもの(高くすれいいのですがこれ以上のものは、大きくて重い)
電源用コード20m
ステー用ひも10m4本
杭5本
工具
アンテナチューナー・・・MFJ製モービル用(借り物)
etc
これらの物を、中ぐらいのキャリーケースと高さ1.5mの大きめの釣り竿ケースに入れて持っていきました。(同軸30mが一番重かったフジクラでなく軽い安物でよかった)


出発まで

 さあ、このシステム(特にアンテナ)でOHからJAに電波が飛ぶのか? 実際にこのシステムで2週間ほど運用しました。 なんとかEUまで飛んでいきましたので少しはJAとQSOできると確信がとれました。 次に、これを1人で素早く上げることが出来るかです。 これも何回か練習し何とかなりました。 我ながらこれはうまくいったと思います。30分もあればOKです。

どんでん返し

 出発3日前にOHから、突然FAXが入りました。 内容は、ヨットで行く場所の変更でした。 「えーーーどこに行くのなんでー」 カッサリ島は港が小さく大きいヨットでは、島に着岸できないので、そのかわりコティルオト島に行くと言う内容でした。 もうすでにインターネットでEU-140でOH5/JR3QHQ/pが運用すると広がっていますので今更行く場所の変更もできなし、この島がどこにあるかIOTAナンバーはどうなっているのか調べるには時間がなさすぎました。

最終手段として、現地へ行って地図を見、独断でEU-***とし変更になった事をアナウンスするしかないと考えました。 実際 QSOした何人かに訪ねられました。 このEU-***が後でどうなるわかりませんが。


出発から到着

 さあ、いよいよ出発です。 関空からフランクフルト経由でヘルシンキへ途中トランジェットを含め約18時間かけてようやく到着です。 (ヘビースモーカーの私には辛いものがありました。)

よく、他の国へトランシーバーや電子機器などを持ち込めばイミグレーションのバゲージチェックで足止めをくらうと聞いていた私は、OHの免許とパスポートを持ち覚悟してイミグレーションに挑みました。 まずは、パスポートを見せ入国の印鑑をもらい、いよいよ問題のセクションへ。 荷物をもって次のドアへドアが開くとそこは、なっなんと空港の到着ロービー。 「あれあれイミグレのバゲージチェックはどこに?」 はじめは、何がなんだかわかりませんでしたが、早い話が、そんなものはじめから無かったのです。

Wでもあるのに、OHっていいとこですよ。ハイ ヘルシンキ到着が、現地時間の夜の8時さすが北欧の国です、外が昼間のように明るい天気は晴れ、夕暮れが夜の10時ごろで深夜に薄暗くなる程度1時か2時ごろには、太陽がでてきます。 この日は、ヘルシンキ中央駅の近くのホテルで1泊。


いよいよ運用OH2ポルボー編

 次の日、運用するためにお金を払いに銀行へ行かなければなりません。これをやらないと、日本初のOHでのアンカバーになってしまいます。 チャーター船の約束の時間が朝9時、OHの銀行が開くのが9時半、そこで、相手を待たせては悪いと思い、先発隊が、先に約束の場所へタクシーで行くことになりました。 ここで少しアクシデントがあってヨットの出発の時間が大幅に遅れました。

とりあえず、ヨットに乗り込み、バルト海クルーズへ。 バルト海ってどんなとこ?、正直言って、瀬戸内海、何百と言う大小さまざまな島があちこちにあり、また、島の形がみな、ピザのように平べったく山がありません。 海は、波も無し、静かな湖のようです。ここで、船酔いをする人はいないでしょう。天気は晴れ、気温22度最高のコンディションでした。風が弱かったので、3日ともまともなセーリングは出来ませんでしたが。 ヨットの中でMM運用を試みましたがうまくいかずワッチのみEUの局が入ってました。 仕方ないので、みんなとクルーズに専念しました。

夕方、第1の運用場所、ポルボーへ到着、いよいよ待望のOHでの初運用です。 情報が無かったので、どんなとこか到着するまでわかりませんでした。 着いてみて唖然ヨットハーバーのゲスト用のバースなのですが、その前がなんと公園。 大勢の人々が散歩したりジョギングしたり、人目に付きやすいつきやすい。 でもここでしかアンテナを建てる場所が無くここで運用するしかありません。 幸いにして最悪のケースは、免れました。(電源も近くにあった) 早急に、アンテナ・リグをセットして現地時間の午後6時からワッチ開始。 運用スタイルは、アンテナの下の地べたに座りまるでふろう者のよう。(あとから、折りたたみ式の机と椅子用にビールケースが差し得れされましたが) まずは21MHzから、YBのCQはよく入いってましたがJAは全く聞こえずEUの局もあまり聞こえないので14MHzにQSY、ここはにぎやかでした。 EUがガンガン入ってました。 やはり14MHzからかと思い第1声、時間は、日本時間の0時35分、ファーストコンタクトは、A41MDでした。

この後は、ほどよく呼ばれ続けQSO数は41局、途中夕食も含め運用。 困ったのは、JAがどの方向にあるのか解りません、コンパスを持ってきてやっと方向が解りました。 (はじめにキャプテンに聞いたら違う方向を指差しよった、JAがはじめ呼んでこないはずですは) この日のJAは、JA7BSV/JA3MZB/JR1BLX/JA7AKH/JA7TI/JAOFVHでした、時間はJST午前5時でした。 ただ、大変よく目立つので、じっと私を見つめ続ける人が後を絶たない始末。

見つめられると落ち着いてQSO出来ないので、こちらから声をかけ「アマチュア無線をやっている」説明すると、納得して去っていく。 これの繰り返しが続くなかのQSOでした。 これで、良かったのはOH2***と偶然にもアイボールQSO出来たことでした。 ガイドブックにも書いてあったのですが、フィンランド人は、散歩とサウナが好きです。 せっかくOHに来たのだから、一晩でもやろうかと思っていましたが、やはりおまけのOH運用、みんなが寝る時間には、アンテナをたたんでQRTとなりました。


運用2日目 ITOA運用

今日が、ITOA運用の日チャーター船のキャプテンに今日行く島を海図で教えてもらいビックリ、なんと小さな島。 「こんな小島誰もし知らんはずや」ここほんとにEU-097??? 確かに近くにはISOSAARI島と言うEU-097の島があります。 キャプテンにISOSAARI島に変更してくれと頼んだのですがダメの一言、曰く「ここもUUSIMAADISTRICT グループの1つ」と。

まあ、とりあえずEU-097にしとこ、ダメだったらあやまるしかない。 島は、とてもきれいな島で無人島。 ただフィンランド人が好きなサウナだけはきちんとある。 サウナに私も入りましたが熱いの熱いの、終いにみんな我慢大会になってしました。

ヨットを着けたところは、おしゃれな桟橋になっていまして、おまけに島の名前が入ったカンバンまでがあり、アンテナを建てるのに絶好場所でした。

ここは、私たちしかいないので1日中アンテナを建てて置いてもOK。 でも、みんなが寝る時間には、QRT。 電源が無いので、発電機をたいてQRV。 やはり運用は、14MHz、21や28はほとんどダメ。 現地時間の夕方6時30分JST0時30分にQRV開始、IOTA EU-097を告げるとすぐにパイルアップになりました。

1度パイルになると他の周波数へ、浮気なんてさしてくれません。 14MHzに居座ることになってしました。 昨日と同じく、間にサウナと食事、島でのキャンプファイヤーを入れて、12時にはQRT。

翌日、21MHzでQRV、北米が良く入ってまして、北米と南米を中心にQSOしました。 この日のQSO数は、189局。JAも何局か呼んできました。 JST5時ごろJAが続けて呼んできましたので、JAを指定しましたがたいして呼んできませんでした。 やっぱり、遠いのでしょうねましてや朝の5時から起きてワッチしているJAはみんな超DXサーばかりでしょう。 この日のJA は、JL7BRH/JA1QXY/JA7IJ/7K4DHBJK1QJE/JA8RJE/JA7AGO/JA3MZB/JH4GJR/JA3FGJ/JA6GYF/JR8TFNでした。


ツルクOH1での運用

 予定通りヨットから降り、ヘルシンキからツルクへ、ここでは、今度のヨットを見るのが目的です。 ヨット会社の社長の接待でツルク観光をした後、いよいよ工場へ。 私は、ここで運用出来るかなと思い社長に許可を求めるとすんなりOK。 船を見るのもそこそこに、歓迎の為OHの国旗とJAの国旗が掛かっている、ポールの下に2ELEを上げ、社長室をシャックに占領し21MHzでQRVしました。

ここでは、あまり時間が無かったので、JAを含み6局のみのQSOになりました。 この日の、JAは、JA1MAO/JR1GMKでした。 この後は、SMのストックホルムの予定でもう運用はできません。 これからあの重たいリグとアンテナの持ってSMに行くのかと思うと疲れがどっとでてきそうでした。

そこで考えました、「リグやチューナーは、借り物だから持って帰らなあかんけどアンテナは、JAで使う予定がない、そうや、ここに置いて帰って、ヨット一緒に送ろう」と。 なかなか良い案でした。その通りにしました。 これで楽になり、後はみんなと普通の観光客として、行動をともにしました。


OH0は、どんなとこ

ツルクからストックホルムへは、バイキングラインという豪華フェリーを利用したのですが、途中でOH0を横切ります。 どんなとこか、見とかないと思い見ましたが観光地です。 誰でも簡単にいけます、OH0と言えば、DXCC上別エンティティーですごいところのイメージがありましたが、何の事はない、観光客がぞろぞろいる単なる観光地でした。 誰でも、簡単にペディションに行けますよ。

終わりに

 私は、海外から運用したい為にあの難しい2アマを取りました。 現在、KH2とOHの2エンティティーからの運用しかありませんが、これからも機会があれば海外へ行きたいと思います。 今度は、おまけでなく無線を目的に行きたいと思ってます。 パイルを受けるのって楽しいですものね。 今回のOHでの運用でいろいろアドバイスを頂いた、方々に感謝いたします。

交信データ
OH2 ポルボー:41QSO
OH2 コティルオト島:189QSO
OH1 ツルク:6QSO
合計 236QSO

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